香山滋の貸本小説他出張買取(名古屋市守山区)

2025年7月25日　金曜日

先日は名古屋市守山区にお住いのお客様からご依頼頂きました｡

お約束のお時間にお伺いし、本の置いてある場所に案内して頂きます。
最初に一階縁側に積み上げられたダンボール箱に収められた本。
続いて二階の二部屋に据え付けられた書棚に並べられた本でした｡
お客様は総数として2000冊以上はお持ちだったご様子です。
二階の書棚は空いた部分があったので、既に処分されてしまった物と思っておりました。
しかし、お客様にお聞きしたところ整理してダンボール箱に収めて一階に移動して頂いていたようです｡
確かに脇にはブックカバーが大量に置かれておりました｡
書店で巻かれるカバーを取り外して頂けると背表紙でタイトルが判るため大助かりです｡

今回の買取について

お客様の本は昭和の一時期､好事家に喜ばれていた書籍が目立ちます｡
巻末の遊び紙には古書店の販売価格(鉛筆による書き込み)。
お店のラベルが角上に貼り付けてあるのもございました｡
専門の古書店で購入されておられジャンルは主に昭和の探偵小説、SF小説となります｡
しかしながら古書店の主人､マニアに好まれる傾向の著者の本を購入されていたお客様の蔵書でも､買取が出来ない本のほうが多く､現在の古書販売の厳しい状況がご理解頂けるかと思います｡

探偵小説について

この度、買取させて頂いた書籍の中に昭和30年代に出版された探偵小説がございました。
詳しく紹介してまいります｡

東方社｢とかげの様な女｣香山滋

1955年(昭和30年)11月10日発行

著者の香山滋は東宝映画｢ゴジラ｣の原作者でも知られる作家です。
著作全てを集めようとされてみえる熱心なお客様もおられるほどです｡

貸本の状態について

巻頭のネオ書房の店印。
のど元に見える綴じられた糸。
補強で張り付けられた紙。
巻末の管理印。
貸出料金等から、こちらは貸本屋さんから流出した本だという事がわかります｡
通常より状態が悪い､貸本で使用された本の為､買取はお安くなります。
しかし､作者によっては高価でもよいとお探しになられてみえるお客様がおられます｡

貸本屋ネオ書房について

ネオ書房はチェーン展開をしていた貸本屋として有名でした。
昭和23年､神戸市で開店した｢ろまん文庫｣を模倣するところから始まったようです｡
(参考資料､不二出版｢復刻版　全国貸本新聞｣から)

従来は保証金制度を用いた貸本屋が主流だったのに対して､身分証明書､学生証明書､米穀手帳等､本人の居住が確認出来れば､信用貸し(代金後払い)をネオ書房が取り入れ､大いに繁盛しておりました｡
最盛期には日本全国で貸本屋は3万店舗以上あったとの事。
コンビニエンスストアの第1位セブンイレブン21248店舗。
第2位ファミリーマート16047店舗。
第3位ローソン13779店舗(2024年1月調べ)。
こちらと比較してみても､どれだけ多かったのか肌で感じられるのではないでしょうか｡

店印の貸本専門ネオ書房､裏門前町二ノ十八は名古屋市中区裏門前町(うらもんぜんちょう)でWikipediaによると裏門前町二丁目1969年(昭和44年)10月21日､住居表示実施に伴い､一丁目及び二丁目が大須三丁目に編入されるとあります｡

既に無くなって久しい貸本という文化に触れられて嬉しく思いました｡
守山区のお客様､この度は漫遊堂をご用命頂き､誠にありがとうございます｡
またご縁がございました際には宜しくお願い申し上げます｡

高評価出来る可能性が高い探偵小説

ご参考までに､下記に漫遊堂で､貸本の状態でも高評価出来る可能性が高い､探偵小説(推理小説)作家を数名明記致します｡

鷲尾三郎(わしおさぶろう)
岡田鯱彦(おかだしゃちひこ)
三橋一夫(みつはしかずお)
不思議小説､明朗(ユーモア)小説を発表｡
同業者はバンカラ小説と命名しており､ずいぶん薦められましたが､店主はまだ一読もしておりません｡

九鬼紫郎(くきしろう)､別名義で三上紫郎(みかみしろう)等もあり
探偵小説以外にも時代小説も数多く発表しており､どちらも買取が可能です｡

楠田恭介(くすだきょうすけ)
大河内常平(おおこうちつねひら)
店主は､おおこうちじょうへいと間違えて読んでいた時期がありました。
古書組合の市場で同業者から指摘され赤面した事がございます。
(割と読み間違いは､始終ございますので､実は慣れっこです)
小説家以外にも､刀剣､軍装関係の収集～研究でも名を馳せた人物で､日本刀の本も執筆されておられます｡

よくあるご質問

古書組合について

それぞれの古書店で､得意分野があり､こちらは漫遊堂さんが苦手とされるジャンルの本なんですねとおっしゃられたお客様がおみえになられた事がございました。
漫遊堂は全古書連加盟店舗で名古屋古書籍商業協同組合所属となります｡
定期的に100店舗以上が集まって､数万冊の古書､古本の売買が行われております｡
市場で売れる本､売れない本､また実際に古書店を経営されてみえる店主とも交流がございますので､買取をお断りさせて頂いた本に関しましてはプロの視点で現在は需要が無い、とご理解頂ければ幸いです｡
古書組合所属店主は全ジャンルにおいて､価値がある本を見極めますのでご安心下さい｡

また､ブログをお読みになられたお客様の世代毎で､価値観が異なります｡
弊店が買取事例で紹介している本も､かつては同業の先輩古書店が廃棄されていた本も多々あり､長年に渡り淘汰され､数が少なくなった為に､需要が出てきた場合もございます｡
まずは捨ててしまう前に収集された書籍の主な内容､書名､著者等をお気軽にご相談下さい｡
一ジャンルを熱心に収集された愛蔵書は高価買取が出来る場合がございます｡
(例えば昭和の百科事典､日本文学全集は買取が出来ません｡
こちら以外の書名でも買い取る事が出来ない本は多々ございますので､あらかじめご了承下さい)